LAR/FARとは。その1

こんにちは。LEOMOの福間です。以前、ブログで紹介したDSSに続いて今回は2回にわたってLeg Angular Range(以下LAR)およびFoot Angular Range(以下FAR)というMotion Performance Indicator (以下MPI)について紹介していきたいと思います。


はじめに


LARおよびFARはTYPE-Rの出すMPIの中ではかなり具体的な値のひとつです。名前から分かるように、LARは腿の、FARは靴のセンサーを元に、「Angular Range」すなわち「角度的な可動域」を出力するものです。


自転車のペダリング動作は、厳密に考えると非常に複雑ですが、シンプルに捉えると腿も靴も同じ動作の繰り返しです。

想像しやすい腿で言えば腿を上げる動作と下げる動作を交互に繰り返しているだけで、靴すなわち足先の動作は腿に比べれば多少複雑ですが、ペダリング中にBBを中心に回転しながらヒールダウン及びヒールアップの動作を繰り返しているに過ぎません。


 

腿も足先も一般的に上死点前に最大角度になり、下死点前に最小角度になりますが、これは人によって差があり、腿と足先が完全に同期しているわけでもありません。とはいえ、この腿の上げ下げ及びヒールアップ・ヒールダウンの動作はペダリングという動作にとっては無くてはならない動作であり、すべての人に共通して現れる動作です。


このように繰り返しの反復運動をするのが自転車のペダリングですが、その腿や足先の可動域を表すのがLARおよびFARです。すなわち腿の位置が最も高くなる(水平面と大腿の成す角度が最も小さくなる)瞬間と、腿の位置が最も低くなる(水平面と大腿の成す角度が最も大きくなる)瞬間の角度の差を示したものがLARなのです。同様に、FARは足先の角度が最も高くなる瞬間と最も低くなる瞬間の角度の差を示したものです。


LARやFARの意味

なぜLARやFARが自転車において重要なのでしょうか?一般的に体の可動域を決める要素は以下の2つです。

・ポジション(ジオメトリー)

・関節の柔軟性


幾何学的には、自転車のペダリングにおける下半身は、サドルとペダルを結ぶ「骨盤」「大腿骨」「脛骨(腓骨)」「足の骨群」「クランクアーム」という5つのパーツを、「股関節」「膝関節」「足首関節(距腿関節)」「ペダル」という4つの関節(ジョイント)を使って繋ぎ、足先の回転運動を生み出している動作です。

サドルとペダルが固定されていたとしても、これらの自由度は非常に多く、幾何学的に動きを制限することはほぼ不可能です(もちろんサドルもペダルも完全に固定されていないのが自転車です)。しかし、人間は膝を逆側に曲げることは出来ませんし、足首関節の可動域は股関節の可動域より小さいので、これら関節の柔軟性(制限)により自然と最適化され、可動域が決まっていきます。LARやFARはこの可動域を数値化し、今までペダリングを評価する際に良く使われていた「腿が上がっていない」「股関節が詰まっている」「こねる動きが大きい」といった感覚的な表現を客観的に評価することが可能になります。

もちろんTYPE-Rのセンサーはペダリングを構成するこれら5つのパーツすべてを評価しているわけではなく、人には筋量や動きの癖などの個人差が多く存在するので、LARやFARが同じだからといって必ずしも動きが同じというわけではなく、逆にLARやFARが違うからと言って完全に動きの特性が違うとはいい切れるものではありません。

とはいえ、LARやFARはそのうちの2つのパーツの動きを評価していることになり、複雑なペダリングという動作を解釈するための重要な手助けにはなります。


では次回はより具体的にどのようにLARやFARを活用すればよいか、いくつか例を上げて説明していきたいと思います。


----------- LAR/FARとは。その2


こんにちは。LEOMOの福間です。先日の”LAR/FARとは。その1”に続いて今回はLARやFARの具体的な活用方法に関して説明していきたいと思います。


まず、値の大小についての議論です。

一般的にLARは45度〜60度、FARは40度〜50度の間に収まることが多く、この範囲から外れる場合、何らかの特徴的な動きをしている場合があります。

例えばFARが70度を超えるような場合は、上死点前に大きくヒールアップをして「こねる」ような動きをしている場合があります。また同様にLARが75度を超えるような場合は、ポジションが著しく前乗りであったり、クランクが長すぎる可能性もありますが、それを補う柔軟性が備わっているともいえます。

また、前述のように自転車はサドルとペダルという2つのコンタクトポイントで下半身を自転車に接続しているため、クランク長だけでなく、サドル高やサドルの位置、クリートの位置などによって値が変化する場合もあります。

ここで重要なのは「大小に対する絶対的な良し悪しを定義するのは難しい」ということです。著しく大きいLARはポジションを再考するきっかけになりますが、柔軟性が十分にある場合にはメリットを活かしているとも言えるので、選手自身の特性を理解して考察することが望ましいでしょう。

また「LARとFARは相互に関係している場合がある」というのも重要です。上死点でヒールアップを行うことでFARは上昇しますが、同時にかかとの位置が上がるので、LARも上昇します。LARやFARが角度範囲のみを表現しているので、これらの相互関係は選手の動きを詳細に見ることで初めて分かる場合が多いですが、値から推測することも可能です。


次にわかりやすい活用方法はLARやFARの「左右差」です。

LARもFARも「角度的な可動域」を表しているので、左腿と右腿、左足と右足の値の差はそのまま動きの差と言っても過言ではありません。とはいえ、人間には「利き手」「利き足」というものが有り、筋量や柔軟性だけでなく感覚的な動作に左右差がある場合が多いので(右手と左手で同じようにボールを投げることが出来る人は少ないでしょう)、そもそも完全に一致させることは難しいものです。

ですので、1度や2度程度の差であれば些細といえますが、選手によっては5度〜10度程度差がある場合もあり、その場合は明らかに左右で動作に差があり、それがペダリング動作の最適化の余地を残している場合があります。

別の可能性として、足の長さの差や柔軟性の差が過去の怪我や事故による手術によって発生している場合もあります。この場合は根本的な改善を目指すよりも、逆にクランク長やクリート位置を左右で変化させたりすることで改善する可能性があるでしょう。


なぜ可動域(Angular Range)なのか

最後に多くの方はこの疑問を持つでしょう。最大角度と最小角度が分かっているならば、それを表示したほうがより役に立つ値であるはずです。なぜTYPE-Rは絶対的な角度ではなく、可動域という情報量の少ない値を表示するのでしょうか。

それは大腿や足先の絶対的な角度を知る術がないからです。センサーは加速度センサとジャイロによって加速度と角速度情報を常に取得し続け、動きがそれほど激しくなければ重力方向を明確に定義することで絶対的な角度をかなり高精度に推定することが可能です。これは現在VRゴーグルやスマートホンで多く利用されている技術と同じものです。ですが、自転車やランニングのように高速で同じ動作を繰り返すような動きの場合、動きが激しい上に動作が止まる瞬間がほぼなく、加速度センサーやジャイロを用いた推定の「ずれ」が次第に大きくなり、絶対的な角度の推定には限界があるのです。とはいえ、センサー自体は情報を出し続けるので、これらを統合的に計算することで、「可動域」という少し俯瞰した値であれば正確に算出することが出来るのです。






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